クリーンエネルギーの大きな可能性:世界の成長を支える、持続可能な電力の供給
育ち盛りの子供たちには、十分な栄養が必要です。同じように、世界の成長を支えるには、持続可能な電力をさらに増やす必要があります。国際エネルギー機関(IEA)によると、電力需要は、2050年までに2022年のレベルから最大150%増加することが予測されています。
将来のエネルギーミックスは、この変動する世界に電力を供給すると同時に、炭素排出量および廃棄物を削減、天然資源を保護しながら、変化し続けている持続可能性の規制やESGの指針に準拠する必要があります。
クリーンエネルギーの中心的な役割を果たす、再生可能エネルギーおよび原子力発電だけでなく、将来に向けた変電や配電網の変革、エネルギー貯蔵システムの拡張、次世代のデジタルエネルギー管理ソリューションなど、その他のイノベーションも必要です。
クリーンエネルギーによる、世界の再構築
世界規模のクリーン・エネルギーへの移行に対する、万能の解決策はありません。状況や発電規模に応じて、地域ごとに異なるエネルギーシステムが必要となっています。
例えば、フランスでは電力の70%を原子力発電が占めています1が、その他多くの国々においても、原子力発電が将来のクリーンエネルギーミックスの重要な一部として位置付けられています。
しかし、発電所の新規建設には莫大な資金、複雑な手順、膨大な時間が必要であり、これらが投資家にとって大きな阻害要因になる可能性があります。「実現可能なビジネスモデルを見いだせないため、ストップしているプロジェクトがあります。不確定要素が余りにも多すぎるのです。」Audrey Goulven(ダッソー・システムズ、サスティナブル・インフラ&クリーン・エネルギー担当ディレクター)
小型モジュール炉(SMR)および先進モジュール炉 (AMR)などの新たな技術が大きな役割を果たす可能性があります。例えば、フランスのNAAREA社は、従来の大規模な施設よりもはるかに容易かつ柔軟に展開できる、小型で柔軟性があり低炭素のAMRの開発を先駆けています。
NAAREA社は、デジタルソリューションにより、プロジェクトをサポートしてリスクを排除しています。同社は、ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを使用して、新しい実験用原子炉の仮想モデルを作成して、設計プロセスを合理化するだけでなく、より投資対効果の高い製品を開発しています。
「投資の対象や当社の現状をパートナー、関係者、投資家、顧客に知ってもらうために、原子炉を仮想空間でリアルに示すことは、重要な要素です」Jean-Luc Alexandre氏(NAAREA社、創設者兼CEO)。
持続可能なエネルギーインフラの提供
再生可能エネルギー源も重要な要素となります。実際、McKinseyの調査によると、グローバルなネットゼロの目標を達成するには、新しいエネルギー技術(太陽光や風力など)の導入および展開を4倍加速させる必要があります。2050年までに、再生可能エネルギーが、世界の電力生産の最大85%を占める可能性があります2。
グローバルなネットゼロの目標を達成するには、新しいエネルギー技術の導入/展開を4倍加速させる必要があります:
エネルギーミックスに占める低炭素エネルギー発電(風力、太陽光、その他)の割合
1/3 今後数十年でこれらの目標を達成するには、エネルギー需要の3分の1を低炭素エネルギー源により供給する必要があります。

しかし、風力や太陽光などの天候に左右される再生可能エネルギー源は、生産量のピークと谷間を予測できない場合があります。この「間欠性」が、エネルギーのサプライヤーや貯蔵プロバイダー、送電・配電システム運営事業者にとって障害となっています。この課題に対処するには、スマートグリッドなど、新しいインフラの整備、新しいビジネスモデル、さらには新しいエネルギー貯蔵技術の導入が必要です。
「化石燃料による発電に使用されている送電網は、特定の地点からの接続が設計された非常に高電圧のネットワークです。しかし現在、送電網の分散および拡張が必要になっていますが、これに対応する送電/貯蔵ソリューションを利用できない場合が多々あります」とGoulven(ダッソー・システムズ)は述べます。Bloombergは、世界全体で1億5000万km以上に対応する送電インフラが将来必要になると予測しており、これは、現在の世界中の送電網の2倍を超える長さです。
送電網が整備されなければ、プロジェクトを開始できません。Bloombergによると、2023年の時点で、米国および欧州の太陽光発電設備の総容量は1,000GW近くに達していますが、送電網への接続待ちの状態です3。また、風力発電は2050年までに世界の電力生産量の35%を占める可能性がありますが4、これも必要なインフラの不足が妨げとなっています。英国だけでも、約200GWの洋上風力発電が送電網への接続待ちの状態です。
複雑なエネルギーインフラを リアルタイムで管理
発電所を稼働して電力を送電インフラに接続後、何が必要になるのでしょうか?
ここからは、一般送配電事業者(TSO)や配電系統運⽤者(DSO)などによる、送電網管理の領域です。これらの事業者は、すべての利用者に対して、常に可能な限り低価格で電力を供給する必要があります。これを達成する、主に2つの方法があります。
1つ目は、ネットワークのオペレーションおよびメンテナンスです ‐ 例えば、TSOは、送電線および相互接続の設計、エンジニアリング、構築、運用、保守を担当します。2つ目は、エネルギー市場において買い手と売り手マッチングさせて、需要と供給のバランスを調整することです。
従来は、エネルギーおよび情報が発電所から消費者に対して一方向に流れるリニアネットワークが通常でした。しかし、ここ数十年で市場の規制緩和が進み、新しいモデルが登場しています。例えば、ソーラーパネル設置住宅や自治体によるソーラー発電所など、最終消費者が電力を生産する重要性がさらに増しています。
このようなエネルギーの双方向の流れに伴って、従来のリニアネットワークに比べて、オペレーションの複雑さが大幅に増しています。
バーチャルツインにより、特定の環境コンテキストで資産のエンドツーエンドのマルチスカラービューを作成して、すべての電力システムの関係者、発電事業者、TSO、DSOに共通のデータ環境を確立できます。これにより、エンジニアリング、オペレーション、建設、メンテナンスのニーズを予測して、適正な価格による信頼性が高い持続可能な電力の生産および供給を確保できます。
エネルギー移行に向けたトレーニング:将来を担うエネルギー専門家を育成
必要な規模によるクリーンエネルギーへの移行に伴い、熟練労働者の必要性がさらに増えていますが、電力業界は人手不足に直面しています。EUだけでも100万の新たな雇用が必要なため、デジタル化のさらなる推進が予想されています。このような状況において、今後のエネルギーセクターにおいて、バーチャルツインに関する知識は不可欠になります。
エネルギーの移行は、自らのキャリアを通じて有意義な社会貢献を果たしたいと考えている新しい世代に大きな可能性をもたらします。ダッソー・システムズは、この機会をサポートするために、持続可能な技術にフォーカスした学生コンペティションを主催しています。これには、世界的なデザインコンテスト「AAKRUTI Global 2024」も含まれています。このコンテストは、世界を変革する次世代の若い才能を育成する取り組みの一環であり、参加者がローカル・グローバルなイノベーションを通じて、クリーンエネルギーへの移行方法を発表する機会を提供します。

インフラ&都市のインサイト
産業界において、再生可能エネルギーへの移行は、温室効果ガスの排出削減、気候変動対策、化石燃料への依存度低減のために重要です。また、安全かつ持続可能なエネルギーの促進により、より環境に配慮した健全な環境を将来にわたって確保できます。
クリーンエネルギーへの移行は、化石燃料や原子力発電から再生可能エネルギー源(風力、太陽光、バイオマスなど)へのシフトを目指す包括的な指針のひとつです。主な要素として、再生可能エネルギー発電容量の拡大、再生不能エネルギー源の段階的な廃止、エネルギー効率の改善、送電網の近代化、エネルギー貯蔵ソリューションの開発などが含まれます。通常、この取り組みは、温室効果ガス排出削減のインセンティブや長期的戦略を提供する政策/法令によって支援されています。一般市民の参加、雇用の創出、イノベーションは、クリーンエネルギーへの移行を成功させる中心的な役割を果たします。包括的な政策措置、技術的進歩、社会の関与により、持続可能なエネルギーの未来に向けた大きな進歩を推進できることが示されています。
石炭火力発電所から太陽光、風力、原子力エネルギーへの移行を推進している国もクリーンエネルギーへの移行の一例です。これには、汚染物質を排出する従来のエネルギー源を再生可能な低排出エネルギー源に置き換えて、炭素排出量を削減および持続可能性を推進することが含まれます。
2023年の時点で、世界のエネルギーの約81.5%が化石燃料(、石炭、石油、天然ガスなど)によって生産されています。前年に比べてわずかに減少していますが、化石燃料は依然として世界のエネルギーミックスの大部分を占めています。
太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーは、クリーンエネルギーへの移行において中心的な役割を果たします。これらは温室効果ガスを排出しない、化石燃料に代わる持続可能なエネルギー源です。再生可能エネルギーへの移行は、グローバルな炭素排出量の削減および気候変動対策に不可欠であり、より環境に配慮した持続可能なエネルギーの未来を実現する広範な取り組みの重要な要素です。
クリーンエネルギーは、いくつかの持続可能な開発目標(SDGs)と密接に関連しています。以下をサポート:
SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」: 太陽光や風力など、信頼性が高く持続可能な近代的なエネルギー源の利用により、エネルギー安全保障を強化して化石燃料への依存度を低減。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」: 持続可能なインフラの開発やエネルギーシステムのイノベーションを推進して、技術の進歩および産業の成長を促進。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」: 温室効果ガスの排出を最小限に抑え、気候変動の緩和に貢献し、その影響に対する回復力や適応力を構築する取り組みを支援。
CETI(Clean Energy Transition Initiative)は、クリーンエネルギーへの移行を支援する政策/規制の策定において重要な役割を果たしています。CETIは、各国政府や各種機関と協力して、再生可能エネルギーの目標設定、クリーンエネルギー投資へのインセンティブ提供、持続可能なエネルギー・プロジェクトに適した規制環境の確保などを目的とした戦略の策定および実施に取り組んでいます。